共起分析ジャンルマップデータネットワーク分析

ジャンル組み合わせの需要マップ

共起分析で見えるジャンルの親和性。「ガテン×マッチョ」「イケメン×鬼畜」などの組み合わせ需要の構造と、その心理学的・文化的解釈を詳述する。

公開: 2024年読了目安: 18分

1. なぜ「組み合わせ」が重要なのか

現代のAVコンテンツ消費において、単一の属性(「マッチョ」「イケメン」)への需要よりも、 複数の属性を組み合わせた「○○×△△」形式の検索・視聴が増加している。 FANZAの組み合わせタグは現在100種類以上を数え、それぞれが独立した需要市場を持つ。

なぜ人々はシンプルな属性ではなく組み合わせを求めるのか。 心理学的には、性的嗜好は「複数の次元の交点」として成立することが多い。 「大きくて(体格)・怖くて(性格/態度)」「かっこよくて(外見)・年上で(年齢)」という 多次元的なファンタジーが、組み合わせカテゴリへの需要を生む。

2. 共起分析の方法論

「共起分析(Co-occurrence Analysis)」は、2つ以上の要素が同時に出現する頻度を分析する手法だ。 テキストマイニング・購買バスケット分析・SNS分析など多分野で用いられる。

AVコンテンツへの適用では、「同じ作品についているタグの組み合わせ頻度」を分析することで、 「どのタグとどのタグが需要者から同時に求められているか」を可視化できる。 Borgatti ら(2009)のネットワーク分析手法を応用し、 タグ間の親和性を「ネットワーク」として表現したのが以下の需要マップだ。

Figure 1 — ジャンル共起ネットワークマップ(上位ジャンル)

ガテン系マッチョイケメン巨根外国人鬼畜巨漢年上

FANZAタグ共起データをもとに模式化。節の大きさ=需要量、辺の太さ=共起強度

3. 最強の共起ペア: ガテン系 × マッチョ

全タグペアの中で最も高い共起率を示しているのはガテン系×マッチョだ。 この高共起率は意味論的整合性から来ている。

「ガテン系(建設・土木等の肉体労働従事者)」という職業的文脈と、 「マッチョ(鍛えられた筋肉)」という身体的特徴は、現実においても高い相関を持つ。 この「現実での自然な組み合わせ」がファンタジーでも一貫性を持つことで、 「リアリスティックなファンタジー」としての説得力を持つ。

また巨漢×マッチョも高い共起率を示しており、 「体の大きさ」という2つの側面(体格の巨大さと筋肉の発達)を同時に求める傾向がある。

4. 「矛盾する組み合わせ」の高需要: イケメン × 鬼畜

興味深いのは「意味論的に矛盾する」ような組み合わせも高い需要を持つことだ。イケメン×鬼畜は、 「外見的魅力(イケメン)」と「行動的残酷さ(鬼畜)」という 「美しいものが酷いことをする」という緊張感のある組み合わせだ。

心理学的には、この「美しい/残酷」の対比が独特の刺激価値を持つことが知られている。 Janoff-Bulman(1992)の「世界観の破壊(worldview violation)」研究は、 期待違反が強い感情応答を生むことを示した。 「かっこいい男性が優しいはず」という期待違反が、強度の高い性的刺激となる可能性がある。

5. 外国人ハブ: 「外国人」の高い共起度

ネットワーク図において「外国人」は多くのジャンルと高い共起率を示す「ハブ」的存在だ。巨根×外国人マッチョ×外国人外国人×鬼畜など、 外国人という属性は多くの他属性と組み合わせることで需要を強化する。

これは「外国人」という属性が「異文化性・未知性・新奇性」という 独立した刺激価値を持つからだろう。Zajonc(1968)の単純接触効果の逆として、 「接触が少ない・馴染みのない」刺激は新奇性による高い興奮価を持つ。 「普段の生活では接触機会が少ない」外国人男性への性的関心は、 この新奇性効果と人種的・文化的差異への「異文化的エロティシズム」の複合だ。 ただし、特定の人種への需要は人種的ステレオタイプの再生産という問題を含む点には注意が必要だ。

6. 「年上」との組み合わせ: 経験と権威の性的魅力

年上男優は、 「イケメン」「おじさん」「鬼畜」など複数のジャンルと高い親和性を持つ。 「年上×イケメン」は「経験があり外見も良い大人の男性」という理想像を体現し、 主に30代以上の女性視聴者に需要が高い。

「年上×支配的」という組み合わせは、心理学的な「権威への服従」という進化的メカニズムと 社会学的な「階層・権力への性的関心」が交差するカテゴリだ。 Milgram(1974)の権威服従研究ほど極端ではないが、「社会的上位者への従属」という テーマは普遍的な性的ファンタジーの要素として確認されている。

7. 需要マップの実践的活用

この種の共起分析は、コンテンツ制作の最適化だけでなく、 自己理解のツールとしても価値がある。「自分が好むタグの組み合わせパターン」を分析することで、 単一タグには現れない「自分の嗜好の構造」が見えてくる可能性がある。

例えば「ガテン系は好きだがマッチョへの共起は低い」というパターンは、 「職業的ワイルドさ」への嗜好が「身体的マッチョ感」よりも優先されていることを示唆する。 このような分析が、自分の嗜好の「どこに本質的な引力があるのか」を理解する助けになりうる。

参考文献

  1. Borgatti, S.P., et al. (2009). Network Analysis in the Social Sciences. Science, 323(5916), 892–895.
  2. FANZA タグ共起データ (2023). 内部分析.
  3. Zajonc, R.B. (1968). Attitudinal effects of mere exposure. Journal of Personality and Social Psychology, 9, 1–27.
  4. Janoff-Bulman, R. (1992). Shattered Assumptions: Towards a New Psychology of Trauma. Free Press.
  5. Milgram, S. (1974). Obedience to Authority. Harper & Row.

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